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Do you believe in the magic of make-believe ?

2017/05/06

将来に憂いが無くなるのは良いことだ。それが果たしてロクな価値を産むのかはともかく、曖昧でも夢を見られるだけで少しホッとしたり、やるべきことにフォーカスして集中出来るものである。僕は比較的ネガティブな性分なので、日本の将来にも悲観的だし、仕事に関しても明るい見通しがあるとは考えられない。およそ平均的なサラリーマンと比べると多少のお金は頂いている方だとは思うが、それとて所詮は一般のサラリーマンの域を超えるものではない。東京で普通に生活をしていれば手元に大した金額が残るわけでもなく、あと 10 年経った時に仕事を続けていられる確信も、会社が存続しているという保証も、同じ会社で働き続けているという確証も無い。例えば妻が子供が欲しいと言ったとして、果たして子供をきちんと育てられるのか心配になってしまう。そんな僕にとっては、僅かばかりでも SO を頂けるのは有難い。「このまま頑張れば何かしらのリターンが得られる」となれば、やれ転職だ、やれこのスキルを身につけなければならぬ、と言ったノイズを意識しなくても良くなる。会社の目標と自分の目標が一致しやすくなり、会社の目標を達成することにフォーカス出来る。こうなると浮ついた最新技術などを追いかけるより、もっとファンダメンタルな知識を得たくなってくる。教養/コンピュータサイエンス/数学/英語といった基礎知識。学生時代の僕は勉強が大嫌いだったが、今にして思えば勿体無いことをしたなぁと考える今日この頃。

ユートロニカのこちら側

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

第 3 回ハヤカワ SF コンテスト受賞作の連作短編。著者は新人でインタビューによると 3 つ目に書き上げた小説だということだが、これがなかなか面白かった。まず文章表現がこなれており読みやすい。また題材の選び方も良い。現代技術の延長に訪れるかもしれない監視社会/安全社会と、情報銀行といった概念は、現代に生きる人々のリアルな肌感を反映していると思う。登場するガジェットはありきたりなものかもしれないが、細かなところまで上手く整理されており納得感のある世界観を描出できている。この点では新人離れしている印象を受けた。一方で課題になってくるのはカタルシスの弱さ。これは作品の中に描かれる「闘争」が余りにも希薄に感じるからだろう。後半に出てくる登場人物たちの闘争は如何にも杓子定規で表面的なものに見えた。前半の作品はやや冗長だったのでこれを削り、最後の章に一つ盛り上げどころがあるとずっと違った印象の作品になっただろうと思う。

2017/04/18

最近営業企画が得意な人と仕事をすることが多いのだけど、彼と話していて自分に足りないものに気付く。

自分自身は割と業務の幅が広くて、本丸のエンジニアリングからプロダクトの企画提案・運用・マネジメントなどもやっているのだけど、未だに契約関連のような法務周りはさっぱり。まぁそれは良いとして、一番彼にあって自分にないなと感じたのは「ワクワク感」だと思った。自分もエンジニアとしては比較的プロダクトのことを考えて提案できる方だと思っているのだけど、まだ何か足りない気がしていたのだが、どうもその理由は「ワクワク感」にあるのではないかと思ったのが昨日。エンジニアやデザイナーというのはどうしても理詰めで考えてしまうのだけど、彼などはそういう論理的な細かい面はすっ飛ばして、とにかく「自分がどれだけワクワク出来るか」「自分も顧客(ユーザー)も楽しいと思えるか」を優先しているように見える。

プロダクトデザイナーなどと話していると「凄いなぁ」と思う反面、何か不足しているものを感じていたのだけど、それもこの「ワクワク感」な気がする。この感覚は社長と話しているときにもあるもので、社長と冒頭の彼に共通していて他の人にないものは正にこの「ワクワク感」だと思った。ユーザーの声を聞くのは大事だが、ユーザーの声を聞くよりも、まず自分がワクワク出来るものかを考えないといけない。

2017/03/31

社長と話していたのだけど最近エラい人と話すときに軽く愚痴ってしまうことが多いなぁと反省。事業をつくるときは前向きに、そして誰よりも自分が当事者になってユーザーのことを考えないといけない。長期的にはビジョンが大事だ。それは本当に誰かの役に立つのか、生活を変えるものなのか。

劇場版 SAO オーディナル・スケール

友達と鑑賞してきたが意外と面白かった。後半の展開は論理的には完全に破綻しているように感じたし、いかにもアニメという感じでステレオタイプな──特に女性キャラクタの──表現には辟易とするけれど、そこを除けばテンポも良く作画も迫力があって面白かったと思う。AR の使い方にも夢があって良い(ちなみに最近 HoloLens を使う機会があったけれど、劇中のレベルに達するまではあと 2-3 段のブレイクスルーが必要になりそうに感じた)。

それにしても、やっぱりこの男性目線過ぎるキャラクタの造形の気持ち悪さは、この作品の大きな欠点だと思う。人によってはセクハラと受け取っても仕方ないレベル。作品自体は面白いと思うのに勿体無い。

ちなみに何故か 4DX で鑑賞したのだけど、控えめに言って 4DX って酷い体験だなと思いました。

騎士団長殺し

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

僕はそこそこ村上春樹ファンだと思う。若い頃にはさっぱりその面白さは分からなかったけど、大学生の頃に数十冊まとめ読みして、その作品の背後にある「物語」の大きさに惹かれた。賛否両論ある作家ではあるし、いつも同じような小道具を使うのもちょっと食傷気味だったりはするけども、日本人で彼ほど大きな「物語」の枠を描ける作家は少ない。小川洋子ぐらいだと思う。

村上春樹が描く「物語」の大きさは『1Q84』で極致に達したと個人的には思っている。『1Q84』で描かれる世界には、巨大なシステムがあり、意思を以てそれを打ち破ろうとする健全な魂があり、闘争があって愛があった。人と人との、名状しがたい身体性を持った結びつきが、揺るがない大きな「物語」を生み出していた。翻って本作はどうか。

結論から言えば「凡作」であると僕は感じた。このところ挑戦していた三人称の文体は影を潜め、昔ながらの一人称で物語は進む。いつも通り、いつも通り、どこまでも平常運転の村上春樹だった。それが悪いわけではないけれど、『1Q84』からの飛躍を──有り体に言えば彼の記念碑的傑作を期待していた僕には少々残念な出来だった。本作には何か大きなテーマが欠けているように感じる。明確な悪やシステムは出てこず、ひたすらに登場人物の内面との対話が続く。もしかしたら村上春樹は新しいチャレンジを諦めて、これまでの「集大成」を作ろうとしたのかもしれない。少し変化を感じたのはラスト。もしかしたら他者から授けられたのかもしれない、場合によっては理不尽とさえ受け取れるそれを、主人公は「恩寵」と呼ぶ。そのおおらかさ、現実との向き合い方に少しだけこれまでの村上春樹との違いを感じたのだった。

エクス・マキナ

エクス・マキナ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

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Amazon プライムビデオで観た。恐らくグーグルだと思われる企業で働く青年が、山奥で暮らす創業者の別荘に赴く。そこでは世界初の人工知能を備えたロボットが研究開発されており、主人公はチューリング・テストを行うことになる──というのがあらすじ。「エクス・マキナ」というタイトルから既にサスペンスの予感がするが、おおよそ想像通り別荘では事件が起きることになる。登場人物はほぼ 4 人しかおらず、舞台は人里離れた山奥の美しい別荘。人間 2 人・AI 2 人というミニマムな舞台設定が、否応無く緊張感を高めてくれる。

映像も美しい。ロボットのデザインもさることながら、別荘とその付近の自然が大変魅力的で目を奪われる。あとで調べたらこれはノルウェー北西部のフィヨルド地域だそうで、なんとホテルとして営業しているそうだ(箱はともかく調度品に関しては映画の方が断然美しいですね)。俄然フィヨルドに行きたくなった。

さて全体としては決して悪くない出来だし楽しく観れたのだが、少しばかり盛り上がりに欠けた気がする。各々の登場人物にもう少し深い関わりが生まれていると、終盤は一層盛り上がっただろう。また、仕事柄か「こんな人工知能はまだ当面は難しいなぁ」と思ってしまい(それ以上に難しいだろうと感じたのはハードウェアだが、そのあたりの設定は多めに見るべきだろう)、今ひとつ乗り切れなかった。