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自生の夢

自生の夢

自生の夢

待ちに待った飛浩隆の新作短編集。なのだが、ほぼ全作品が既読だったので大きな感動は無い。表題作である『自生の夢』よりも『#銀の匙』や『曠野にて』の方が好きなのは、そのガジェット(〈Cassy〉 や〈BI〉や〈夢字花〉 )に惹かれるからなのだけど、もちろん飛浩隆の凄いところはそんな表面的なところになく、『自生の夢』や『はるかな響き』、そして最新作である『海の指』にも顕われている圧倒的な「イメージ」の奔流である。凄烈で残酷・噎せ返る程に濃密な世界が圧倒的な質感を伴って眼前に迫る、いや意識を縊り捻る。そんな本である。

しかしやっぱり再読となると初読のときほどの感動は無く、唯一未読であった『はるかな響き』が特に印象に残った。

人間は〈私〉という意識がじぶんの表玄関だと考えているが、それは買いかぶりだ。〈私〉は、人間の中に生起する圧倒的質感とはほとんど無縁で、ぽつぽつと貧弱な語りをつむぐ「裏口」に過ぎないのだ。〈私〉があるという感覚――セルフ・アフェアネスは、生きる上で大した役割を果たしてはいない。人間も他の動物と同じく、ほとんどの認識と行動は、無自覚に進められている。さて、それでは、なんのために人類は〈私〉の感覚をもっているのか?自分のためには必要でないのなら――と考えてみれば分かるだろう。そう。〈私〉は、他者のためにある。