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ユートロニカのこちら側

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

第 3 回ハヤカワ SF コンテスト受賞作の連作短編。著者は新人でインタビューによると 3 つ目に書き上げた小説だということだが、これがなかなか面白かった。まず文章表現がこなれており読みやすい。また題材の選び方も良い。現代技術の延長に訪れるかもしれない監視社会/安全社会と、情報銀行といった概念は、現代に生きる人々のリアルな肌感を反映していると思う。登場するガジェットはありきたりなものかもしれないが、細かなところまで上手く整理されており納得感のある世界観を描出できている。この点では新人離れしている印象を受けた。一方で課題になってくるのはカタルシスの弱さ。これは作品の中に描かれる「闘争」が余りにも希薄に感じるからだろう。後半に出てくる登場人物たちの闘争は如何にも杓子定規で表面的なものに見えた。前半の作品はやや冗長だったのでこれを削り、最後の章に一つ盛り上げどころがあるとずっと違った印象の作品になっただろうと思う。